ドラゴンアームズ、システムに対する悪意と贖罪

天空より突如現れた謎の機械生命体MISTの攻撃により、人類は生存圏の約9割を失った。この敵に対抗出来るのは古代遺跡から発見された飛空戦艦バハムートと人型騎甲巨兵ドラゴンアームズのみ・・・そしてそれに乗り込んだ少年たちは、人類の存亡を賭けた戦いに挑む。
『ドラゴンアームズ』とは、そんな絶体絶命を戦い抜く愛と青春と鉄と魔法のメカ・ファンタジーTRPG・・・だそうです。

ドラゴンアームズ バハムートハウリング (ログイン・テーブルトークRPGシリーズ)

ドラゴンアームズ バハムートハウリング (ログイン・テーブルトークRPGシリーズ)

僕は・・・このシステムは正直、苦手だった。
ロボットものに対して詳しくは無いけど、嫌いなわけではなかった(ガンダムはそんな詳しくないけど、ボトムズザブングルは好きだし、エヴァンゲリオンガオガイガーも見ていた。最近ではアクエリオンも面白かったと思う)し、ロボットを扱うTRPGは他にもやっていた(ワース・ブレードは心のシステムだし、エンゼルギアはコンベンションでも立てた)。けど、ドラゴンアームズは苦手だったのである。
その理由の一つはシステムに対する不満。
今では、もっとアレなシステムが世にあふれているがw当時の僕としては、そのシステムは美しさを欠き、どこか歪なものに感じられた。
戦闘などに偏った技能、ノルマのようにこなしていかなくてはならない感情、わけの分からない性格ルール・・・今ならば、「このようなことをやるゲームだ」で納得いくだろうが、まだ旧来のゲームに染まっていた当時、僕はその戦闘バランスの難度の高さと相まって、ドラゴンアームズをクソゲーと断じてしまった・・・。
そして取っ掛かりの悪さ。
最初に戦闘したときには何がなんだか分からないうちに仲間がやられてしまい、早々と自爆玉砕という選択肢をとらざるを得なかった。初めてキャラクターメイキングをしたときはワケが分からず、役に立たないキャラクターを作ってしまった・・・実際、キャンペーンなどでやっている人たちと僕との間に知識という点でとても深い溝を感じてしまい、あまり進んでやりたいと思わなくなってしまった。


その後、他のロボットものTRPGエンゼルギア』のGMをやるようになった僕は、ますます『ドラゴンアームズ』と対立し、疎遠になって行った。
しかし、サークルのメンバーも入れ替わり、新たに『ドラゴンアームズ』に興味を持つ人も出てきた。それについて説明しているのを横で聞いていて、僕も多少なりの興味が出てきた。
そして、遂に『ドラゴンアームズ』を再びやる機会*1が訪れたのだ・・・。
シナリオは『クールメカニクス』というムックに載っていた市販シナリオ「モータルストーム*2」。
ルールブックに載っているサンプルキャラクターは役に立たないものが多いそうなので、みんなキャラクターを作ることに。各自にデータのコピーが渡されて、メイキングが進んでいく。僕はこのゲームを今までに4回ほどやったことがあるので何とかルールを思い出しながら、戦闘で活躍できるキャラを作っていけた。ドラゴンアームズを始めてやる2人は大変そう・・・いや、自分のメイキングと平行して、必死に説明したり相談に乗っている某氏の方が大変か・・・。


で、セッション自体は市販シナリオなので深くは触れませぬ。
ただ、印象に残るのは5人中何故か4人が女性キャラだったり、みんな感情判定*3を数こなせていなかったために、ラスト2,3シーンで必死にそういう話に持っていったり(例えば・・・ええっと、まずPC3に対する憧憬でシーンに登場して、PC5に対する反感で突っかかっていって、帝國への忠誠で誇りが無いのかと罵倒して・・・PC5の家族への感情のロールプレイで言葉に詰まって、そのPC5を自分の父親に重ねてしまい・・・みたいなことを、各PCがやっているのでなんというか、面白いけど不自然すぎw)、敵に捕まったヒロインに銃が突きつけられているところに、あるPCがもっている銃を敵にひゅんっと投げつけて、みんながポカーンとしているなか、ヒロインが撃ち殺されたり・・・と、そんな印象深いシーンがたくさんある、面白いセッションではありました。


このセッションを行って、僕も今までのようなドラゴンアームズに対する悪印象はなくなりました・・・が、手放しにほめるのは難しい・・・これが正直な感想です。
やはり予想されたとおり、メイキングと戦闘が難しい。
戦闘が複雑で難度が高いために、それを想定したキャラクターメイキングが必要となり、それが出来ないと戦闘で活躍できない。しかし、メイキング時点でそれを説明するのは難しく、初心者は往々にして戦闘ではボケェっと経験者の華々しい活躍を眺めながら、自分の手番がきたら経験者の指示に従ってキャラクターを動かしていくだけとなる。ダイス目は大きく状況を左右せず、細かい戦術と所持している能力で事が動く・・・盛り上がるGMと経験者、そして結局戦闘システムを理解できぬまま、冷めた目で見つめる初心者たち・・・って、ああ、これか、自分がドラゴンアームズが嫌いになった瞬間は!
全滅したときはまだ呆然としながらも笑うことが出来た。役に立たないキャラクターを作っても、まだ楽しむことは出来た。しかし、一番冷めたのは、楽しんでいる人との溝を感じた瞬間だった・・・。
ドラゴンアームズは損をしていると僕は思う。
もし使えるサンプルキャラクターと分かりやすい戦闘リファレンスがあれば、初心者ももっと楽しめるかもしれないのに。そうすればもっとこのゲームを好きな人が増え、より長くプレイされただろうに・・・と(まあ、さすがにバランスの再調整は必要だったかもしれないが)。
まあ、当時のTRPGの状況を考えると仕方が無いといえるかもしれないけれど・・・これで僕のドラゴンアームズに対する評価はただのクソゲーから、TRPGの変革期に存在した惜しいゲームに変わったのであった。


で、最後に・・・この「モータルストーム」というシナリオには、ルールのいろいろなページを資料としてプレイヤーに見せろという表記がありまして・・・其処であるPCがヒロインと外部デッキで会話をするシーンがあって、それに関して、外部デッキについては〜ページ参照みたいなことがシナリオに書いている・・・で、見てみると冒頭のカラーの漫画部分、男女が外部デッキでいちゃついている情景が描かれていました。それを見て爆笑するプレイヤーたち。「つまりここではいちゃつけ、ラブシーンをやれというシナリオの要求仕様なワケですねw」「いや、そんなわけでは・・・」あせるGM。そして、ワルノリしてその漫画のセリフを再現するプレイヤーwこのシナリオ一番の盛り上がりでしたw
いやぁ、ルールブックの巻頭漫画をここまで有意義に使っているのは始めてみましたよw
実に、このシナリオは天晴れw

*1:これは僕にとっては再挑戦と、今まで悪意を向けたことに対する贖罪の意味があったのだった

*2:ついつい癖で無意識に、某TRPGの用語「アバターストーム」と書き込んでしまうorz

*3:セッション開始時に定められた感情5つに関して、その場面でそれに関するロールプレイをすると判定ができるようになる・・・これに十分な回数、成功しておかないと戦闘でマジ死ねる。