記憶をさがして(まだ未完です)

この間の土曜日、サークルの定例会で僕は今年入った新人(まだTRPG初心者)がGMをする卓でセッションすることになりました。
システムはパワープレイプログレス。僕がGMに何故こんなシステムをやる気になったのかと聞いたところ、自分で思い付いている世界観が昔からあった、それをプレイするシステムがないかとある先輩に相談したところ、このシステムを薦められた。と、答えました。まあ、それならば面白い、君の世界を見せてもらおうかと、僕はそのセッションに参加することになったのです。

パワープレイプログレスって?

パワープレイプログレス(以下PPP)は2000年にゲームフィールドから発売された汎用世界ファンタジーRPGです。このシステムは前作に当たるパワ−プレイ(1991年)のルール・データを(サプリメントや雑誌に掲載されたものも含め)まとめて、オリジナル世界設定のルールを付け加えたものとなっています。
さて、このゲームの売りとなっているのはシンプルなルールと多彩な職業・種族・魔法、そしてそれをもとにゲームマスターがオリジナルで世界を創ることを推奨されていることです。
 
パワープレイが発売された当時、業界*1TRPGブームで、至る所で設定マニア*2な人々がD&Dソードワールドのシステムで自分たちの世界を披露していました。
そこでパワープレイはシンプルなルールでこれからさらに増えるであろう初心者をつかみ、背景世界をつけないことでオリジナルのファンタジー世界を展開したいが自分でシステムを組む手間はかける気のない熟練者が使いやすいようにとマーケティングされたシステムだったのです。
実際、ムックタイプで廉価で販売されたパワープレイはそこそこ売れたはずです。しかし、ちょっとちまちまとしたゲーム性や、世界を創らなくてはならないと言う売りと背中合わせの負担、そしてオリジナル世界ゆえに仲間内でしか広がらないという閉鎖性のため、ムーブメントになるには至りませんでした*3
そして、9年の年月を経て、PPPが発売されました。一冊にまとまって検索性が高まり、数多くある種族・職業・魔法・選択ルールなどもワールドシートに記入することで明確に取捨選択できるようにして、そういった面でのプレイアビリティは格段に上昇しました……しかし、9年という年月は長過ぎました。市場にはシステム・コンセプト・世界観において以前よりも洗練されたゲームが数多く存在しています。その中でPPPはその存在意義*4を示すには至らなかったのです。
 
私が所属するサークルでもPPPの評価は……正直厳しいものでした。ある者は表紙を「エロゲーじゃねえんだよ!」*5と罵倒し、ある者は「今さら出されても……ねぇ」「この世界創造ルールって何なのよ?」と否定しました。たくさんの種族使うならファンタズム・アドベンチャーでいいよがファイナルアンサーとなって、PPPは一、ニ度たてられたあと、日の目を見ることはなかったのです。
当時、僕はこのように評していました。「結局、システムが世界を左右してしまうが為に、汎用システムには限界が生じてしまう。特に極端なカスタマイズを考えていないPPPでは尚更。……このシステムを有効に使うには、世界を主体としたセッションをやるのがいいかも知れない。SF・FT小説にあるような、独特な世界の、その秘密に迫り行く物語。ある意味、世界を使い捨てにするセッションこそがPPPには相応しい」
そして、今……偶然にも、僕と同じ結論に至った新人が、PPPに挑戦することになったのです。

世界説明とキャラクターメイキング

さて、それではキャラクターを創る前に世界説明。
 
この世界は「ワールドポット」と呼ばれている世界です。
平面の世界が縦にいくつも重なっている世界で、そのはじには世界と世界を繋ぐ“階段”が存在しています。その“階段”の存在は限られた者だけが知っています。
PCたちは世界に適応できなかった“アウトロー”になります。“アウトロー”たちはもともとは人間でしたが、適応出来なかったが故にその姿が異形のモノ(データは寿命と文化形態などを除いて異種族のものを使う)と変わってしまっています。彼等は普段は“階段”にある“踊り場”に住んでいますが、それぞれの目的の為に、様々な世界を旅して回るのです……もしかしたら、その目的の果に人間に戻る術があるのかもしれません。
 
……その説明を聞いて、サークルの古参メンバー大熱狂!!
しかし、今回は割り振りの関係で新人3人+サークル三年目1人+超ベテラン*6の僕というメンバーになってしまいました。
参加できなかった人たちの分まで僕も楽しもうか!……といったところで種族選択。
今回は設定上、人間、ハーフエルフは選べません。まず新人たちが思い思いに種族を選んで行きます。アーラエ(有翼人)、キャットテイル(身軽なネコ耳)、スネイクマン(蛇人間)……どうやら、僕は僧侶か戦士系を作った方がよさそうです。一人残った三年目の彼はホビットで拳法家を作るらしい。……何ッ、スネイクマンは義賊にするですと!?……じゃあ僕は盾になって回復もできる、便利な聖堂騎士かなぁ。
結局、僕の手元にあるのはケンタウロスとバニー*7の二つ。ここはあえてバニーとも思ったが、今回は種族の寿命や生態は採用しないので、バニーをやる意義が無いではないですかぁ!……ということで、ケンタウロスで決定しました。
 
ここでGMがメイキングをすすめる前にプレリュード……いかにして、そのものはアウトローになったのかを語るという。
で、みんなD10を振って、生まれた世界をきめて、各人ごとにそのキッカケをGMが語ることになりました。
僕の場合はこのような物語でした。

延々と沙漠が続く、そんな孤独な世界に君は生まれた。
君は孤独が寂しく、友だちと温もりが欲しくて、荒涼とした世界を彷徨い続けた。
ある時、君は砂の中に何かを見つけた。
君は必死にそれを掘り起こした……
掘り起こされたモノは、一本の短剣だった。
何ともいわれぬ絶望にも似た感情に突き動かされた君は、
自分の喉をその短剣で突いた。
……目をさますと、そこは見知らぬ場所*8であった。
気付くとその身体は半人半馬に変わっていた。
……そして君は旅に出た。
自分の居場所を、孤独から救ってくれる友だちを捜しに。
ちなみに、君の生まれたその沙漠の世界の事を人は……“死の世界”と呼ぶ。

うぉぉ! すげぇ、イカス! と必要以上に盛り上がる僕。
そんなカンジで他のみんなもプレリュードを行ない、そしてその設定を元にキャラクターメイキングに入ることになりました。
 
能力値決定と入れ替え、職業決定、装備購入、魔法修得とメイキングが進んで行きます。
しかし、ダイスを使ったメイキングにはえてして悲喜劇が付きまとうもので……僕が器用と知性(ともに2d6+8で種族的に低い能力。平均は3d6+7)で一ゾロをだしたり、僕が魔法の修得で最も必要な「メディテーション*9の奇跡の修得に失敗したり……そんなこんなで笑いを(特に僕が)振りまきながらメイキングは一時間半くらいで終了しました。
 

クレシア(アーラエ:女17歳:精霊使い)

クレシアはある時から自分がアーラエになって人間に殺される夢を何度も見るようになった。その夢から逃れるために、にぎやかでありながら落ち着ける、そんな場所を捜して行って、ある場所に辿り着いた……しかし、そこで眠りに落ちて、目覚めてみると自分の背中には羽が生えていた。夢からは逃れられても、現実からは逃れられぬのか……。
“夢の世界”出身。絵を書くのが好きで、世界中の絵をかこうとして旅をしている。

ラクル(スネイクマン:男28歳:義賊)

小さな頃から国の決まりや決定にしたがわず、罰せられ、時には牢に入れられる……そんな少年時代を過ごした。
あるとき、またカラクルは法(何ともつまらない決まりだ)を犯した。しかし、今回はいつもと違って、彼は牢に入れられることも無く、笞打たれることも無かった。国の住人は彼に関わろうとせず、家の中に身を隠した。これは穏やかな追放だな、そう理解したカラクルは国の城門を出た。そこで番兵はカラクルを「悪魔」と罵った。そこで初めて彼は自分が蛇人間になっていることを知った。
“法の世界”出身。理知的で思索に耽るのが好き。

シュート=マロック(ホビット:男18歳:拳法家)

彼は一人きりだった。確かに、周囲に人はいた……しかし、だれ一人として彼に関心をはらう者はいなかった。だから彼は家を出た。世界は広かった……無限に広がり輝く星空を走るうちに、世界はさらに広がって行くように感じた……そして気付いた時、彼は小人になっていた。
“無関心の世界”出身。一人っ子だったので調理が得意で、手料理をみんなに食べてもらうのが好き。

ライゼル(キャットテイル:男16歳:レンジャー)

ライゼルが気付いた時、彼はその姿で崖の下に横たわっていた。ここが何処なのか、自分が誰なのか、何故ここにいるのか……何も覚えていない。近くにある街にいってみたが、その町並みも、出会う人々も彼の記憶に無いものであった。だから、彼は旅に出た。自分が何者であるのか、今までどんな人生を生きてきたのか、その想い出を捜しに。
“忘却の世界”出身。森を散策するのが好き。
 
そして、僕のPC。

ドルチェ=リモーネ(ケンタウロス:女22歳:聖堂騎士

孤独な“死の世界”で自害しようとするが、何故か命が助かり、この姿になる。その後救いを求めて聖堂騎士となるが、彼女はまだ神の声を聞くことが出来ず、奇跡を使うことも出来ない……それゆえに、さらなる孤独感を感じており、内向的で仲間への依存心が強い。
所持品で得た乗用馬メイショウ=オスカルを従馬として連れている。趣味は刺繍と裁縫、これをしていると心が落ち着くという……しかし、腕前はド下手(器用度10しか無いですから)。

そして、自己紹介のあと、セッションが始まった。

ちょっとその前に

冒険の旅が始まる前にルールの確認と質問が行なわれた。
このゲームの判定は能力の現在値から求められる成功チェック値([能力の十の位]d6+[能力値÷5])を振って、その結果が難易度以上であれば成功である……が、振ったダイス目の中に1つでも1が含まれていれば、自動失敗となる。ゆえに、ダイスを数多く振れば振るほど自動失敗しやすくなるのだ。まあ、振るダイスの数を任意に減らすことができるので、通常は1d6+[能力値÷5]で判定を行なうことになる。
今回は選択ルールで「16相殺」*10を使用するので、ちょっとはマトモに判定できると安心するPL達。
その隙に僕が自動失敗の確率を手計算でもとめた(間違っていたらごめんなさい)……相殺無しなら1dで17%、2dで31%、3dで42%。相殺有りなら2dで25%、3dで30%くらいになるはず……有りと無しでは大きく違うなぁ。まあ、これでいざとなったらバンバン、ダイスが振れるって事で。
 
ここでシュートのPLが質問する。
「“練気”を使うのに敏捷修正ある鎧を着てはいけないと書いてあるんですけど、道着って修正つきますよね?」
……このままだと拳法家は道着を着ながら戦えないことになる。なんかおかしい。無理をして道着を着ていても、強い敵に出会った時にはPRIDE GP中村和裕vsヴァンダレン・シウバ*11の再現になってしまうのではと期待……いやいや、不安になってしまった。
しかしGMはしばらく考え込んだあとに「別にいいですよ」と良識ある判断をくだした。良かったね、シュート。

悲しみに包まれた街

【もうちょっと、完成まで待ってて下さいね】

*1:世間とは言えないところが悲しい

*2:SF・FTマニア崩れや、ロードス島戦記、ファイブスターストーリーなどの作品に感化されて、オリジナルの世界と細かい設定・データを作り上げるのが趣味になってしまった人たち。ただし、プロとは違って、売りはどこか、いかに見せるのかが考えられていないところが(周囲の人にとって)悲しい

*3:それでもルールが気に入ったか、自分の世界に愛着があるか、細々とやりつづける人はいました

*4:世界創造のルールがルール・データの選択以外の面については取ってつけたようなものであったのが惜しまれる……学園って何だ、学園って。せめて、どのように遊ぶかのビジョンを提示できていれば……そこが進歩していなかったのが大きい

*5:当時はまだ皆、潔癖だった……今ではNWだろうが特命転校生だろうがALSだろうがエンギアだろうが平気ですよぅ

*6:1LVファイター、いわゆる古強者。“超”は多分特殊能力か何かで、わかりやすくいうとHD1+くらい? まあ、雑魚。詳しくは旧版D&Dを見ろ

*7:ウサミミ少女。一年で成人し、その後は放浪しながら毎年単性生殖で子供を作り、老化せずに15歳でポックリ死ぬ。うちの会では、病気で全滅するのではないのかとか、魔法か何かで遺伝子を書き換えるのではとか、環境的に危機になると実は雄を生むのではないかとか、議論を呼んで大人気

*8:GM「……見知らぬベットの上であった」僕「……あのう、ケンタウロスってベットに寝るんですか?」GM「うひゃあ!……じゃあ、藁の上で」

*9:PPPには魔法の使用の前提となる魔法が存在している。通常は判定無しで修得できるが、記憶力があまり高く無い兼業職だと、修得判定が必要になる……しかもこのゲームは判定に1の出目が1つでもあると自動失敗だ! これに失敗したら、他の魔法をいくつ覚えていても使用は出来ないぜ! ……\(゜∀゜)/unko!

*10:1の自動失敗を6の出目で打ち消すことができる。自動失敗になるのは1の出目が6の出目より多い時だけとなり、派手にバランスが変わってしまう。高LVになるとバランスが何がなんだかわからなくなる微妙なルール

*11:中村がシウバに途中まで善戦していたが、邪魔になった道着を脱ぎ捨てた、その次の瞬間にシウバの猛攻を受けてアッという間に負けてしまった、そんな間抜けな試合