醜い下男と小さな吟遊詩人

時代は明治か大正か。
ある著名な音楽家の演奏旅行に僕は書生としてついていった。
今日はある声楽家がゲストで参加しているが、足場(工事現場の足場のような細長い板が階段状に並んでいる)が足りないので金具をくくりつけて場所を作り出している。音楽家は声楽の楽器としての位置づけを講釈たれている。
僕は音楽家に頼まれて、下男を連れてあるところに御参りに行く。下男は体が大きくて醜いが温厚でいいやつだ。


(ここでマスターシーン?それともデストロン側か?)
暗い部屋の中で怪しげなものたちが蠢いている。
なにやら下男や音楽家をさして、これに報いをとか、同類が我らを離れて生きていけるかと話している。
そして一体の白い女の幽霊のような(エクトプラズム?、下半身が細長いぼろぼろの布状の形で宙に浮いている)奴が、下男のところへと向かう。


街中で僕は本に出会う。
その漫画(!?)は僕の知らない僕らの状況まで描いていた。
その本の名は「〜の音楽家と小さき吟遊詩人」。しかし今の僕らのところには小さき吟遊詩人は居らず、でっかい下男がいるだけなのになぁと思いながら、また街を歩く。
途中で知り合いの博徒に出会う。彼は仲間たちと旅打ちに来ていたが、今日は気分が乗らずぶらついていると言う。せっかくだから同行してもらう。


街中の、建物の間の裏にあるその小さなスペースには墓か小さな祠のような物が立っていた。
僕らが其処に足を踏み込むと、突然、天から雷が落ちてきて下男を撃った。僕は驚き、博徒とともに倒れこんでしまう。
下男はすでに息絶えており、その体は半分熔けていた。醜い姿がさらに醜く、人外の化け物のように見えた。
其処に白い女の幽霊が現れる。しかし、その女の幽霊も同じように雷に撃たれて滅びた。


楽家はこのことを知って、僕たちをこの墓の下へ遣わせたのだろうか?
ああ、きっとそうだ。何故ならこうなることを僕だって知っていたのだから。今まで気にしていなかったのだけど、あの「〜の音楽家と小さな吟遊詩人」という漫画にこの運命は描かれていたのだから。
あの本はなんだったんだろう、小さな吟遊詩人は一体誰なんだろう‥‥‥そんなことを考えながら、僕は夕暮れの街を歩いていった。