『鬱金の暁闇 破妖の剣6』前田珠子

破妖の剣』は、人間とそれよりも遥かに力ある「魔性」の住む世界を舞台として、魔性を討つ浮城の破妖剣士である半人半間の少女ラエスリールと、その護り手たる妖主(魔性の中で最高クラスの存在)闇主の二人とその仲間たちが、様々な魔性(力はあるものの、そのままならぬ想いと陰謀に引きずられる者たち)と戦っていく姿を描いた物語である。

破妖の剣(6) 鬱金の暁闇 1 (コバルト文庫)

破妖の剣(6) 鬱金の暁闇 1 (コバルト文庫)

あまりライトノベルは読まない僕が、読み続けている数少ないシリーズではあるだが、他のライトノベルと違うのかといわれたら別にそんなこともなく*1、適度にシリアスで、適度に軽いところもあって、このあたりの表現や描き方ちょっとどうかなぁと思うところも結構ある、まあアレだ、それなりに面白く読める作品だなぁくらいの評価だけど・・・何故か妙に好きで、本編も外伝も(本編のイラストレーターの厦門潤が描いている漫画も)ずっと買っていた作品である。
なぜ好きかといわれると、僕がもともとファンタジー好きだというのはある。若い頃に読み始めて未だに引きずっているというのもある。人付き合いが苦手で自虐的なところがあるけど情に弱いラエスリールとそんな彼女に惹かれている仲間たちのキャラクターが気に入っているというのもある。厦門潤のイラストが好きというのも、もちろんある。
しかし、この作品の真の魅力は「魔性」たちにあるのだといえよう。
人よりも遥かに強い力を持ち、複数の命と不老の姿を持つ魔性たち。しかし、その魔性の中にもヒエラルキーは歴然として存在しており、むしろ、その力と外面の美しさが比例している・・・その明白さは人間社会よりも残酷である。そして、魔性の中で頂点にたつ五人の「妖主」たちも、その永劫の命をもてあまし、激しい感情や歪んだ美学や奇妙な陰謀に身をゆだねている。
単純な悪ではなく、存在は異質ながらも人と同じような(むしろ、はるかに激しい)感情を持つ存在・・・それと人とのかかわりの中で描かれるドラマが、この作品の肝であるのだ。
そして、僕はそんな魔性の魅力に惹かれているのかもしれない。


で、前作の『翡翠の夢 破妖の剣5』と外伝数冊を読んでから数年たって、この間『鬱金の暁闇』が出ているのを本屋で発見したので、そこにあった三巻まとめて買ってみたところ・・・まだ完結していないorz
しかも、3巻が出たのは2003年。ちなみに『漆黒の魔性 破妖の剣1』が出たのは1989年で『翡翠の夢』が完結したのが1996年・・・如何したものかと。
鬱金の暁闇』がいつ完結するのかは分からない。しかし、これだけのタイムスパンで発行しているのだから、まだ希望はあるはずだ、少なくとも田中芳樹の作品よりは可能性があるw
だから待とう、完結するまで。それだけの価値がある作品かどうかは分からないけど、好きであることは確かなのだから。なに、待たされるのには慣れている。『鬱金の暁闇』自体の書評は、完結した際に書くことにしよう・・・さすがに其処までブログを続けているとは断言できないけどorz

*1:むしろ、最近はやっているモノのほうがずっとレベルは高いのかもしれない・・・ほとんど読んでないけど