『毒草を食べてみた』植松黎

「タイの法律によれば、クラトンを売買以外の目的で所持すると二カ月の懲役である。しかし、初犯ならもっと軽く、研究用ならさらに軽いだろうと、勝手に考えた」
「猛毒と無毒のトリカブトをどう見分けるかといえば、熱心な研究者は根をかじってみる」
……誰かこのおっさんを止めてくれ。この本を読みながら僕はそう思った。

『毒草を食べてみた』は文春新書から出ている毒草についてのエッセイ&解説書である。
植松黎は毒草の専門家であり、多くの著作を持つエッセイ書きである。
本書の内容も、それぞれの毒草の歴史、神話、伝承、実際に起きた事故、科学・医学的データと考察を、時に詩的に、時にはユーモアを交えて書きだしている、実に良質なエッセイとなっている。

しかし、だがしかし、著者はまるで子供のような好奇心でドクウツギやビンロウやクラトンをこの本のタイトルどおり、口にしてしまう。
実際は本に載ってるごく一部しか味見をしていないし、ちゃんと知識がある上での行為である……それでも、衝撃的である。すぐ隣のページに毒草による様々な被害が書かれているのに、平気で口にしたことを載せてしまう著者の正気を疑ってしまう。
しかし、やはりこの本は面白いのだ。
日常のすぐそばに潜んだり、歴史の中で大きな存在感を示したりする毒草と、人間との関わりあいは、著者が言うように興味深いものなのである。
ぜひ、普通に毒草に関する雑学エッセイとして読んでみて欲しい。
最後にはきっと満足した読後感の中、頭を抱えつつも植松黎氏のとりこになってしまうだろう!

古参のTRPGゲーマーには、ウルフズベインやクラーレ毒が載ってるので、一読する価値があるかも。