違う歌、届かなかった歌

僕がいつもサークルでお世話になっているs2_it先生が、サークルの若手相手のセッションに失敗してしまいました。
http://d.hatena.ne.jp/s2_it/20050625
システムはローズ・トゥ・ロード(新版)、シナリオは『ザ・ストレンジソング』に載っている「違う歌」。私もGMしたことがありますが、とても幻想的で素晴らしいシナリオだと思います。
しかし、そのシナリオは若手には受けいられなかった(少なくても、受け入れられなかった人がいた)。
これは一体、誰が悪いのでしょうか?
 
僕は誰も悪くなかったと思います。
敢えていうならGMが焦りすぎただけなのでしょう……幻想を伝えることに。
ちょうど僕はそのセッションの終盤を横で見ていて、GMが終電の都合で先に帰ってしまったので、代わりに反省会に参加することになりました。
ある若手は「物語として良いのかもしれないが、ゲームとしてなっていない、バランスがとれていない」と批判しました。
その時、僕はこのセッションの中でGMとPLが違うゲームを遊んでいたんだなぁと、気付きました。
そのPLにとってシナリオとはキャラクターを演じながらクリアするミッションであり、敵とは乗り越えるべき障害である。しかし、GMにとってシナリオはその世界の中で織りなされる物語であり、敵とは故あって対立することになった、その世界の住人なのです。
僕はよく、ファンタジーRPGには「ファンタジー風世界で冒険するゲーム」と「ファンタジーするゲーム」がある、という表現をしますが、「違う歌」は明らかに後者の方だったのでしょう。
 
おそらくGMはそのギャップに気付いていました。そして、それを乗り越えさせようとして荒療治をしてしまったわけなのです。
しかし、最初、自分が想像していたものとは全然違った味わいに、PLのみせた反応は「不味い」だった……。
そんな不幸な出来事なのです。
 
もし僕がやるとしたならば、最初はその世界にPCが入り込める様に全力を尽すでしょう(生活をじっくり描くか、他の冒険を先にはさむか……)。その上で本題の冒険に入っていく。そして、物語の中でPLが気付いていく……。
結局、どんな幻想をGMが示したとしても、それに気付き、受けいれる主体はPLなのです。
そこのところをs2_itくんは焦ってしまった。それだけなのでしょう。
 
しかし、この「違う歌」はいつか、きっと若きPL達に届くことでしょう。
今回s2_itくんは歌うことができなかったけれど、いつの日か、他の誰かが、s2_itくん本人がリベンジで、それとも、いくつかの冒険を乗り越えていった今回のPLたちが……旋律は違うだろうけど同じく響くその歌を歌う、幻想の世界へと。
僕はそう信じます。